レ ミゼラブル 解釈

谷口浩久「演じないために」ミュージカルを10倍楽しむ方法！！映画、舞台のお話も。7月7日（日）に大阪で開催される おかげさまで、お席は少しづつ埋まってきております。  それまでの間は、ミュージカル    僕は2011年、いわゆる「旧演出」の最後の年に出演していました。帝国劇場の稽古場で東日本大震災を経験し、近くの日比谷公園まで避難しました。そして、急遽開催が決まったチャリティー・コンサート。  戦う者の歌が聞こえるか？鼓動があのドラムと響き合えば新たに熱い生命が始まる明日が来たとき  そうさ  明日が    その後、新演出版に変わってからも、旧演出版を愛する声は後を絶ちませんね。僕も、旧演出版の出演者として、やはり深い愛着を感じます。 そして、よくいただくのは「新演出版と旧演出版、どちらが『良い』ですか？」というご質問。 正直なところ、僕の答えは「どっちも『良い』！！」です（笑）  そもそも、新旧の演出は、ドラマの語り口からテーマの置き方まで、かなり違うと感じています。その２作品を比較するのは、ひょっとすると「まったく別の作品同士の比較」と言えるほど。（あくまでも、これからお話しするのは、個人的な解釈と感想です。悪しからず……）  例えば、先日記事で書いた旧演出では、冒頭のワンシーンしか登場しないので、司教のエピソードはジャン・バルジャンを軸に「赦し」を描いているように感じていました。そんな声が聞こえてくるようでした。 一方、新演出になると。司教はラストシーンにも登場するので、司教自身の人生の物語が浮き上がってきます。信仰心の揺らぎという大いなる葛藤の中、その課題をジャン・バルジャンという男を通して乗り越える。そんな、  この新旧の違いから、まず、２つの気づきがあります。 １つは、旧演出はそれぞれのシーンが独立して展開しているのに対し、新演出では、新演出版になって登場回数が増えた人物としては、旧演出版で僕も演じていた彼が二度、ファンティーヌの前に登場することによって、例えばファンティーヌの「存在の軽さ」が浮き彫りになっています。 ２つ目は、全体のテーマ。旧演出では、司教がバルジャンの罪を洗い流してくれたのに対し、新演出では、司教がバルジャンを「ゼロ」に戻すことで、そこから「悲劇の人」の人生が再スタートするような導入になっています。旧演出は「人は生まれながらにして罪人である」という、原罪をテーマとして扱っている一方で、新演出になると「自らの幸福の創造主は、己の心の中にある」というテーマに変わっているように感じます。どちらも、人の心のあり方を説いているという意味では全く同じテーマなのですが、実は、聖書の場面に置き換えると、それが描写されている位置が若干違うのです。旧演出の「原罪」と「イエスがそれを背負ってくださった（＝赦し）」というのは、聖書ではかたや、新演出の「神（創造主）は『自分』である」というのは、聖書の（※これらの解釈については、また追って詳しくお話しします。）  ……まぁ、司教の場面や、聖書の解釈については、あくまでも僕の個人的な見解にすぎませんけれど。  ただ、ここでひとつ、面白い数字をご紹介します。 2010年を境とした約５年間の、人間の注意力の「持続時間」を計測した数字です。2007年だったか（すみません、正確な数字を覚えていなくて）に、人間が１つの物に注意を向けていられる集中力を計測したところ、それが、たった５年後には、  そして、その５年間の間に普及したのが  インターネットと、それに続くスマートフォンの普及が、人間のあり方を大きく変えたのです。  日本では、新演出版の初上演は2013年。そこで作られた作品が、1980年代の旧演出に比べ、圧倒的にスピーディーな演出を要求されたことは、上の数字からも一目瞭然ですよね。 そして、人間が、注意力や情報処理能力の圧倒的な変化を経た今、「１シーンに１個の情報」だけでは、とても注意を持続できません。したがって、同じ人物を繰り返し登場させるなどして、映画などでも、例えばマーベルの様々なスピンオフ映画や、バットマンやウルヴァリンなどの「前日譚」が盛んに制作されているのは、同じ理由なのではないかと思います。新しいストーリーを単体で語ろうとすると、その導入部分ではキャラクターや状況説明を１から行わなければならず。どうやっても「１シーンに１個の情報」がしばらく続いてしまいます。ところが、すでにシリーズやスピンオフになっている物語なら、冒頭からおなじみのキャラクターが登場し、前作で張り巡らされた伏線をいきなり回収に取り掛かれるので、情報量が圧倒的に多くなるのです。「マーベルの映画やハリー・ポッターは世界を知ってるから飽きないけど、新しい映画は見るのが億劫」みたいな経験、皆さんもあるのではないかと思います……。   旧演出版の、暗闇と光を使った演出は、本当に素晴らしかったですよね。そこで繰り広げられるシーンの情緒に、観客は、どっぷりと浸かっていました。場面の連続性ではなく、一つ一つのシーンや楽曲を単体としてちぎり、その一つ一つをゆっくりと噛み締めていたのです。おそらく、その しかし、新演出版は、それを拒絶します。観客が情緒に浸っている隙を与えず、次から次へと伏線を張っては回収し、物語を連鎖させていきます。「どっぷり浸る」のではなく   『レ・ミゼラブル』の、新旧両演出版の比較。例えて言うなら、映画 どっちも『良い！！』ですし、それぞれで違ったメッセージを読み取ったり、違った楽しみ方ができると思います。           ◆日時：7月7日（日）13時〜15時◆    ◆  ◆登録無料。◆谷口浩久の情報をLINEで配信します。（上のロゴをクリックしてご登録ください）

出典元: 「レ・ミゼラブル」は1862年にヴィクトル・ユーゴーが書いた小説です。 1980年代にその小説を原作としたミュージカルが上演され記録的ロングランとなりました。 そのミュージカルをもとにした映画が、2012年に公開された「レ・ミゼラブル」です。 1980年代にその小説を原作としたミュージカルが上演され記録的ロングランとなりました。そのミュージカルをもとにした映画が、2012年に公開された「フランス革命後の混沌とした時代を通して、現代を生きる我々に登場人物が体現しているものは何か、名作「レ・ミゼラブル」を徹底解説していきます。この映画には西洋の文化が大きく反映されています。映画の冒頭でジャン・バルジャンは司教によって許しをもらいます。このことが現代の日本を見ると、メディアは人を中傷することで人気を集めているのが現状です。学校、職場では道から外れた人を攻撃し排除しようとします。「許さない」「許せない」という言葉は、とても醜く悲痛なものです。劇中ではジャン・バルジャンは愛の為に投獄され、正義という愛の為に追われることになりました。犯罪者として認識される彼ですが、どんな環境にいても、愛を失ってはいけないのです。宿敵であるジャベールさえも大きな愛で救い出しました。尖った生き方は、相手の棘も引き寄せます。人を愛するということは、自分が愛される人間になるということに繋がっていくのです。劇中には彼らはそれぞれの人生の中で苦しみ、自分を見失う時もありました。しかし孤独に生まれたコゼットは、花が咲くような明るい少女に育ちます。彼女は自分の人生に対してもし、彼女が「自分なんて……」「どうせ」という考えで生きてきたら、物語は変わっていたでしょう。不幸な人生のようですが、彼女はヒュー・ジャックマン演じるジャン・バルジャンは、冒頭では怒りに身を委ねる人物でした。彼が変化したのはなぜでしょう。そして、彼が体現しているものとは……。当初彼は牢獄で絶望と憎悪に染まりきり、社会に復讐しようとしていました。人にこれは現代でも問題になっていることですが、自分が愛されているという経験がない人は善悪の判断がしにくいのだそうです。ジャン・バルジャンは、まさに愛を知らない人物だったといえます。

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